■ナオミ台詞集
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「ええ、行ってもいいわ」
ナオミ初台詞。はじめ彼女は譲治の誘いを
断ることも無く、大人しくついていったものでした。

「あたし、英語が習いたいわ」
「それから、音楽もやってみたいの」

学問をやりたいなら僕がならわせてあげる、と
言った譲治に対しての台詞。この後英語は大いに役立つ。

「あたし、チューリップが一番好きよ」
譲治はこの台詞に対して、ナオミはゴミゴミした路次に
育ったのでこういう習慣になったのではと述べる。

「まあ、ハイカラだこと!あたしこう云う家がいいわ」
譲治とナオミが一緒に住むための家を探していて見つけた
大森に建つ洋館についての感想。このメルヘンな家が、
ナオミの腰を落ち着けない性格の原因を作る。

「ハイ、ハイ、ドウ、ドウ!」
家に移り住んでまもなくの頃の、馬乗りごっこにて。
この馬乗りはまだサディズムとは無関係の無邪気な遊びだった。

「どう?譲治さん、あたしの脚は曲っていない?」
海水浴に行ったときの、脚の間に隙間の無い綺麗な脚を
得意に思っての台詞。

「パパさん」 ナオミが何かをねだったり、だだを捏ねたりする時
ふざけて譲治を呼んだもの。譲治はナオミを
「ベビーさん」と呼んでいた。

「譲治さん、きっとあたしを捨てないでね」
「ほんとに譲治さんの気に入るような女になるわ、きっと………」

ナオミと譲治が『切っても切れない関係』になった夜の
寝床での会話。この頃まだナオミはいじらしかった。

「河合チェンチェイ、堪忍して頂戴な」
譲治がナオミの態度を叱った時、ナオミが言った台詞。
結局譲治はナオミに甘くなってしまう。

「どう?あたしの方が少し悧巧でしょ」
譲治が自分の肉体に惹かれ始めているのを悟ったナオミが
放った台詞。譲治はあくまでナオミの機嫌をとるつもりで
ナオミを悧巧だと言ったのだが、これを境にナオミは優位に立ち始める。

「もう駄目だわよ、何と云ったってあたしに抗(かな)やしないわよ」
「やっぱり歳よりは頭だわね」
「自分の方が馬鹿なんだから、口惜しがったって仕方ないわよ」

ナオミに自信を持たせる事がナオミを美しくすると考えた譲治は
悧巧がる癖を助長させようとする。トランプでもわざと負けてやって
ナオミからこのような言葉を浴びせられる。しかし
負けを演じていたはずの譲治は本当にナオミに勝てなくなり、
自信を吸い取られていく。

「毎日々々内で遊んでばかりいたってつまりやしないわ」
ある日、浜田という、ナオミと同じ音楽の先生の
生徒が家に来ており、ダンスを習わないかという。
家にこもりきりのナオミはこう言い、譲治と2人で
習いに行くことになる。

「ねえ、譲治さん、新しいのを拵えてよ!」
ナオミは浜田をはじめダンス場に通う学生と仲良くなり、
譲治はダンス教師のロシア人の夫人に会うのを楽しみに
ダンスを続ける。ある時銀座のダンスカフェへ出る
事となり、ナオミはこう言って新しい衣裳をほしがる。
こうして譲治の収入は、ナオミの贅沢には追いつかなくなる。

「もっとしッかり!ハイハイ、ドウドウ!」
2回目の馬乗り。すっかりナオミが成熟したと認めた上での
ものであって、もはや無邪気な遊びではない。

「パパさんじゃないの?何しているのよそんな所で?
みんなの仲間へお這入んなさいよ」
「おほほほほ」

譲治と鎌倉へ行ったものの、実はナオミは浜田や熊谷という
男学生たちと秘密に会うために鎌倉へ行きたがったのだった。逢引現場を
見てしまった譲治に、一糸纏わぬ姿で酔いながらかけた言葉。

「あたし、昔のような幸福が欲しいの。でなけりゃなんにも
欲しくはないの。あたしそう云う約束であなたの所へ来たんだから」

浜田や熊谷の話を聞き、ナオミは彼らと手を切ることを誓ったが
譲治との間には溝が出来たままで、譲治は懐いてくれなくなった事に
悩む。子供が出来たら真の夫婦になれると主張する譲治に、ナオミが言った言葉。

「じゃあ出て行くわ」
「では御機嫌よう、どうも長々ご厄介になりました。―――」

誓ったものの、やはりナオミと熊谷は続いていた。
密会現場を見てしまった譲治は怒り狂い、出て行けと
ナオミを殴る。するとあっさりナオミはこう言う。

「あたしよ」「今晩はア」
たびたび荷物をとりに戻ってくるようになったナオミ。
ある時、譲治がしばらく気づかないほど変貌した、
西洋婦人そっくりになったナオミが訪ねて来た。
その時の台詞。ナオミは譲治が崩れるまでの誘惑を開始する。

「これから何でも云うことを聴くか」
「あたしが要るだけ、いくらでもお金を出すか」
「あたしに好きな事をさせるか、一々干渉なんかしないか」
「あたしのことを『ナオミ』なんて呼びつけにしないで、
『ナオミさん』と呼ぶか」

譲治はついにナオミの魅力の元に理性が壊れ、背中へ馬乗りに
なってくれと懇願する。ナオミは四つン這いになった背中に
跨り、この要求を出す。譲治は全て受け入れる。

「どう?あたしの恐ろしいことが分った?」
譲治を手懐けたあと、ナオミが言う台詞。
譲治は、浮気と我が儘あってこそのナオミを可愛く思えると悟り、
虐げられている現状に満足を感じる。
私自身はナオミに惚れているのだから仕方がない、としめくくる。
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